激務な業界は「高年収・高成長の裏返し」、自分の価値観で選ぶ
「激務」と言われる業界は、多くが高年収・急成長・若手の裁量が大きいという魅力の裏返しでもあります。大切なのは激務を一律に避けることではなく、自分の価値観(年収・成長 vs ワークライフバランス)で納得して選ぶこと。本記事では激務度の傾向と見極め方を整理します。なお働き方改革で各社とも改善が進んでいます。
ただ、「激務」は人によって受け取り方がかなり違う言葉です。そこでこの記事では、イメージの話に入る前に、厚生労働省の統計3つ(業種別の残業時間・有給休暇の取得率・大卒の3年以内離職率)と、企業が公表している残業時間、有価証券報告書の数字を並べて、どの業界・会社で何が多いのかを一緒に確かめていきます。
統計で見る「残業が多い業界」ランキング(2025年)
まずは残業時間です。厚生労働省「毎月勤労統計調査」の2025年分結果確報から、正社員などフルタイムで働く人(統計の言葉では一般労働者)の1か月あたりの残業時間(所定外労働時間)を、多い順に並べました。
| 順位 | 業種 | 残業(所定外労働時間) | 総実労働時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 運輸業,郵便業 | 24.1時間 | 175.3時間 |
| 2 | 電気・ガス業 | 16.9時間 | 156.9時間 |
| 3 | 情報通信業 | 16.5時間 | 160.5時間 |
| 4 | 飲食サービス業等 | 15.6時間 | 172.6時間 |
| 5 | 教育,学習支援業 | 14.8時間 | 157.2時間 |
| 6 | 製造業 | 14.7時間 | 162.3時間 |
| 7 | 不動産・物品賃貸業 | 14.5時間 | 162.9時間 |
| 8 | 学術研究等 | 14.2時間 | 158.5時間 |
| 9 | 金融業,保険業 | 13.6時間 | 151.0時間 |
| 10 | 建設業 | 13.5時間 | 164.3時間 |
| 11 | その他のサービス業 | 13.0時間 | 157.1時間 |
| 12 | 鉱業,採石業等 | 12.4時間 | 166.8時間 |
| 13 | 卸売業,小売業 | 11.3時間 | 161.3時間 |
| 14 | 生活関連サービス等 | 10.5時間 | 163.3時間 |
| 15 | 複合サービス事業 | 8.3時間 | 154.3時間 |
| 16 | 医療,福祉 | 6.7時間 | 153.6時間 |
| — | 全体(調査産業計) | 13.2時間 | 160.5時間 |
※厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」第2表(事業所規模5人以上・一般労働者・1か月平均)。業種名は統計表の略称のままです(飲食サービス業等=宿泊業,飲食サービス業、学術研究等=学術研究,専門・技術サービス業、生活関連サービス等=生活関連サービス業,娯楽業、その他のサービス業=サービス業(他に分類されないもの))。
1位の運輸業,郵便業は月24.1時間で、全体(13.2時間)の約1.8倍です。2位と3位が電気・ガス業(16.9時間)と情報通信業(16.5時間)なのは、少し意外かもしれません。
もうひとつ見ておきたいのが、右の列の総実労働時間です。残業では4位の飲食サービス業等が、総実労働時間では172.6時間で2位に上がります。建設業も残業は13.5時間で全体並みなのに、総実労働時間は164.3時間で4位です。決められた勤務時間(所定内労働時間)そのものが長い業種もあるので、「残業が少ない=ラク」とは限らないんですね。
有給の取りやすさと、3年以内に辞める人の割合
残業時間だけでは、働きやすさの半分しか見えません。同じ厚生労働省の統計から、有給休暇の取得率(就労条件総合調査)と、大学を出て就職した人が3年以内に辞めた割合(新規学卒就職者の離職状況)を業種ごとに並べ、有給の取得率が高い順にしました。
| 業種 | 有給休暇の取得率 | 大卒の3年以内離職率 |
|---|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 75.2% | 12.4% |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 | 74.3% | 19.1% |
| 製造業 | 72.8% | 21.2% |
| 金融業,保険業 | 72.8% | 25.0% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 69.7% | 38.8% |
| 医療,福祉 | 68.4% | 40.8% |
| 情報通信業 | 66.9% | 27.2% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 66.8% | 33.9% |
| 不動産業,物品賃貸業 | 65.5% | 36.5% |
| 運輸業,郵便業 | 65.3% | 31.5% |
| 建設業 | 60.7% | 30.5% |
| 教育,学習支援業 | 60.5% | 44.2% |
| 卸売業,小売業 | 59.9% | 卸売業30.0%・小売業40.4% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 59.6% | 54.7% |
| 複合サービス事業 | 57.1% | 28.8% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 50.7% | 55.4% |
| 全体 | 66.9% | 33.8% |
※有給休暇の取得率は厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第5表(常用労働者30人以上の民営企業。2024年または2023会計年度の1年間に取った日数÷付与された日数)。3年以内離職率は同「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」の大学卒・産業別の表にある就職者数と3年以内の離職者数から割り出した値です(全体の33.8%は公表値と同じ)。
並べてみると、残業の多さと辞める人の多さは、あまり重なっていないんです。電気・ガス・熱供給・水道業は、残業が月16.9時間で2番目に多いのに、有給の取得率は75.2%で全業種のなかで最も高く、3年以内離職率も12.4%で最も低くなっています。
反対に、3つの統計がそろって厳しいのが宿泊業,飲食サービス業です。残業15.6時間(4位)、総実労働時間172.6時間(2位)に加えて、有給の取得率は50.7%で最も低く、3年以内離職率は55.4%で最も高い水準です。残業がいちばん多い運輸業,郵便業は、離職率では31.5%と全体(33.8%)より低くなっています。
私が面白いと思ったのは、コンサルティング会社や広告会社、会計事務所などが入る学術研究,専門・技術サービス業の数字です。残業14.2時間、有給66.8%、離職33.9%と、ほぼ全体並みなんですね。外資系投資銀行も、統計では銀行や保険会社と同じ金融業,保険業の区分で集計されます。業界の平均は人数の多い会社や職種に引っぱられるので、激務のイメージが強い一部の会社の働き方までは、この表には映りません。
企業が公表している残業時間が長い会社(当サイト掲載企業)
会社ごとの数字も見てみます。厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」には、女性活躍推進法などにもとづいて企業が公表した「月平均の残業時間(法定時間外労働と法定休日労働の合計)」が載っています。当サイトに掲載している511社のうち、この値を確認できた270社を長い順に並べた上位15社がこちらです。
| 順位 | 企業 | 業種 | 月平均の残業時間(公表値) | 対象・注記 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ALSOKグループ | 警備・セキュリティ | 41.2時間 | 基幹的な職種 |
| 2 | 大林組 | 建設・ゼネコン | 32.1時間 | 正社員/就業規則上の労働時間(7時間45分)を超えた時間と社休日の労働で計算 |
| 3 | 旭化成ホームズ | 住宅メーカー | 31.3時間 | 正社員 |
| 4 | NTT都市開発 | 不動産開発 | 30.1時間 | 正社員/自社の所定労働時間(7.5時間)に対する残業時間 |
| 5 | ヒューリック | 総合デベロッパー | 29.9時間 | 正社員/短時間労働者を含む |
| 6 | 大成建設 | 建設・ゼネコン | 29.7時間 | 正社員 |
| 7 | NTTデータ | 日系SIer大手 | 29.5時間 | 正社員/1日の所定内労働時間は7.5時間 |
| 8 | NTTデータフィナンシャルテクノロジー | NTTグループ・金融IT | 28.8時間 | 正社員/法定の8時間ではなく自社の7.5時間を超えた時間で計算 |
| 9 | 三菱UFJアセットマネジメント | 資産運用 | 28.7時間 | その他/正社員と嘱託・契約社員 |
| 10 | 北海道電力 | 電力 | 28.1時間 | 正社員 |
| 11 | 横浜ゴム | タイヤ | 28.0時間 | 正社員/2024年度 |
| 12 | 三菱重工業 | 重工・防衛 | 27.4時間 | 正社員 |
| 13 | 朝日新聞社 | 新聞・デジタルメディア | 27.1時間 | 正社員/2025年度・出向者を除く |
| 13 | シマノ | 精密機器・スポーツ | 27.1時間 | 正社員/2025年4〜12月 |
| 15 | ENEOS | 石油・エネルギー | 26.9時間 | 正社員/所定外労働時間(2026年3月31日現在) |
※出典:職場情報総合サイト(しょくばらぼ)(https://shokuba.mhlw.go.jp)のデータ(2026年10月16日更新)を加工して作成。社名で照合できた会社だけで、年度は会社ごとに違います。注記で2023年度以前の値と分かった3社は除きました。対象(正社員・基幹的な職種など)と計算のしかたが会社ごとに違うので、順位は目安として見てください。
270社の中央値は月15.7時間で、20時間以上は78社、30時間以上は4社でした。上位には建設(大林組・大成建設)、住宅・不動産(旭化成ホームズ・NTT都市開発・ヒューリック)、システム開発(NTTデータ・NTTデータフィナンシャルテクノロジー)の会社が多く入っています。
ここで気をつけたいのが、数え方の違いです。注記に「7.5時間を超えた時間」とある会社は、法定の8時間を超えた分だけを数える会社より、同じ働き方でも長く出ます。順位の近い会社どうしを比べるときは、注記まで目を通しておくと安心です。
激務度が高いとされる業界の傾向
| 業界・職種 | 激務の傾向 | 見返り |
|---|---|---|
| 外資投資銀行(IBD) | 非常に高い | 圧倒的高年収・成長 |
| 戦略コンサル | 高い | 高年収・成長・出口 |
| 大手広告・テレビ | 高い(繁忙期) | やりがい・ブランド |
| 総合商社 | 中〜高(部門差大) | 高年収・海外駐在 |
| ベンチャー | 中〜高 | 裁量・成長速度 |
※激務度はあくまで一般的な傾向の目安で、部門・配属・時代により大きく異なります。近年は働き方改革で改善が進む企業も多い。
この表は、就活でよく名前が挙がる業界・職種を編集部が整理したもので、統計の数字ではありません。外資系投資銀行や外資系の戦略コンサルは日本で株式を上場していないため、当サイトが金融庁のEDINETから集めている有価証券報告書(301社)にも1社も入っていません。数字で確かめられるのは、上場している会社が中心になります。
総合商社7社の有価証券報告書を見ると、勤続は長い
表の中で数字を確かめられるのが総合商社です。7社の2026年3月期の有価証券報告書から、「従業員の状況」を並べました。
| 企業 | 平均年収(有報) | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(提出会社) |
|---|---|---|---|---|
| 三菱商事 | 2,113万円(2026年3月期) | 42.3歳 | 17.6年 | 4,456人 |
| 三井物産 | 2,059万円(2026年3月期) | 42歳 | 17.4年 | 5,333人 |
| 伊藤忠商事 | 1,991万円(2026年3月期) | 42歳 | 17.8年 | 4,125人 |
| 住友商事 | 1,840万円(2026年3月期) | 43.3歳 | 18.3年 | 4,938人 |
| 丸紅 | 1,784万円(2026年3月期) | 42.5歳 | 17.8年 | 4,225人 |
| 豊田通商 | 1,421万円(2026年3月期) | 43歳 | 16.7年 | 2,466人 |
| 双日 | 1,257万円(2026年3月期) | 40.5歳 | 14.7年 | 2,094人 |
※各社の2026年3月期有価証券報告書の「従業員の状況」(提出会社単体の数字。海外の子会社などを含む連結の人数とは違います)。
平均年収は7社とも1,200万円を超えていて、中央値は1,840万円です。それでいて平均勤続年数は14.7〜18.3年(中央値17.6年)と長めです。ちょっとした読み方のコツがあって、平均年齢から平均勤続年数を引くと「入社したときの平均年齢」が出ます。中途で入る人が多い会社ほどこの数字は高くなりますが、7社は24.2〜26.3歳と、新卒の年齢に近いところに集まっていました。
ただ、勤続が長いことは「忙しくない」ことの証明にはなりません。部署ごとの残業時間までは有価証券報告書に書かれていないので、ここから先は次の方法で確かめていきます。
入社前に「激務度」を見極める方法
激務度は企業・部門で大きく異なります。入社前に見極めるには次の方法が有効です。
| 確認方法 | 見るポイント |
|---|---|
| OB・OG訪問 | 実際の労働時間・繁忙期をリアルに聞く |
| しょくばらぼ(厚生労働省) | 企業が公表した月平均所定外労働時間・有給休暇の取得日数・新卒の採用者数と離職者数など |
| 青少年雇用情報の請求 | 応募先に、残業・有給・新卒の離職者数などの職場情報を出してもらう |
| 有価証券報告書 | 平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与(上場企業など) |
| 働き方改革の取組 | 制度が実態として機能しているか |
このうち、案外知られていないのが若者雇用促進法のしくみです。新卒を募集する会社は職場の情報を幅広く出すよう努めることになっていて、応募者から求められたときは、①募集・採用(過去3年間の新卒採用者数・離職者数、平均勤続年数など)②研修などの能力開発 ③雇用管理(前年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数など)の3つの区分ごとに、1つ以上の情報を出す義務があります(厚生労働省・都道府県労働局のリーフレット「青少年雇用情報シート」)。
区分ごとに「1つ以上」なので、残業時間そのものが出てくるとは限りません。先に厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」(掲載152,380件・2026年10月1日時点)で志望先を検索して、載っていない項目だけを聞くと、やり取りが短くすみます。会社が出す数字は全社の平均なので、部署ごとの違いまでは見えない点だけ気をつけてください。
自分に合う働き方を選ぶ
激務=悪ではありません。20代で圧倒的に成長したい・高年収を得たいなら激務でも価値があり、ワークライフバランス重視なら安定業界を選ぶのが正解。重要なのは、自分の価値観に合った選択をすることです。ホワイトな働き方を重視するなら、ホワイト業界・隠れ優良企業も検討しましょう。逆求人PRやエージェントで複数の選択肢を持ち、働き方も含めて比較するのがおすすめです。後悔しない選択のため、激務度を事前に把握しておきましょう。
ホワイト企業はホワイト業界ランキングやホワイト企業ランキング、隠れ優良は隠れ優良企業ランキングもご覧ください。
この記事のデータの出典
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」(2026年2月25日公表)第2表 月間実労働時間及び出勤日数
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第5表 労働者1人平均年次有給休暇の取得状況
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月24日公表)新規大学卒業就職者の産業別離職状況
- 総合商社7社の有価証券報告書(2026年3月期・金融庁 EDINET)
- 厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」(企業の公表値は2026年10月16日更新のデータを加工して作成)、都道府県労働局のリーフレット「青少年雇用情報シート」
統計の数字と掲載件数は、2026年10月16日に厚生労働省のサイトで確認しました。

