このニュースのポイント
AnthropicがClaudeに身分確認(Identity Verification)を導入しています。公式のヘルプ記事「Identity verification on Claude」(2026年10月21日確認)は、目的を「不正利用の防止、利用ポリシーの徹底、法的な義務への対応」と説明しています。対象は「一部の利用場面(a few use cases)」から順に広げている段階で、特定の機能を使うとき、定期的なプラットフォームの健全性チェック、そのほかの安全・コンプライアンス上の確認の場面で、確認を求める画面が出ることがあります。
このヘルプ記事は Hacker News で638点を集めていて(この記事の作成時点)、開発者の関心の高さがうかがえます。ヘルプ記事の最終更新日は2026年8月11日です。
技術的な背景
身分確認の導入は、Claude だけの動きではありません。OpenAI も公式のヘルプ記事「API Organization Verification」(2026年10月21日確認)で、一部の製品・機能・モデル・プログラムを使う前に、本人確認(Identity verification)や事業者の確認(Business verification)を求めることがあると説明しています。どちらも、すべての利用者に一律で求めるのではなく、特定の機能や場面に限って確認を求める形をとっているのが共通点です。
公式のヘルプ記事に書かれている手続き
確認の作業は、本人確認の専門会社 Persona を通して行います。用意するものは次のとおりです。
| 区分 | 必要なもの(公式) |
|---|---|
| 個人 | 政府が発行した顔写真つきの身分証(実物)と、カメラつきのスマートフォン。その場で自撮り(セルフィー)を求められることがある |
| 組織 | 個人と同じものに加えて、組織の正式名称・住所・事業者の登録番号 |
使える身分証は、パスポート・運転免許証・州や県が発行する ID カード・国民 ID カードなどで、読み取れること・傷んでいないこと・有効期限内であること・写真があることが条件です。コピーやスクリーンショット、スキャン、写真を撮った写真、スマートフォンの中のモバイル ID、学生証や銀行のカードのような政府発行でない証明書、仮の紙の証明書は使えません。確認がうまくいかない主な原因として、写真のぼやけ、読み取れない・期限切れの書類、登録番号の誤り、技術的な問題が挙げられていて、やり直しても通らない場合はヘルプのフォームから問い合わせます。
データの扱い(公式)
- 身分証とセルフィーの画像は Persona が受け取って保管し、Anthropic のシステムには保存しない。Anthropic は異議申し立ての審査などで必要なときに Persona を通して記録を見るが、画像を複製・保存はしない
- データは送信中も保存中も暗号化される
- 確認のデータは本人確認だけに使い、モデルの学習には使わない。法律で求められる場合を除いて共有せず、マーケティングにも使わない
- データの管理者(data controller)は Anthropic で、使い方と保存のルールを決める
この記事の初版では、身分確認したユーザーのデータを学習データとして区別して使える、といった推測を書いていましたが、公式のヘルプ記事は「学習には使わない」と明記しています。訂正します。
OpenAI の本人確認との比較(公式)
2社の公式ヘルプ記事に書かれている条件を並べると、次のとおりです。
| 項目 | Claude(Anthropic) | OpenAI |
|---|---|---|
| 確認を求める場面 | 特定の機能を使うとき、定期的な健全性チェックなど。一部の利用場面から順に導入 | 一部の製品・機能・モデル・プログラムを使う前。本人確認と事業者の確認のどちらか、または両方 |
| 個人の確認 | 政府発行の顔写真つき身分証(実物)と、カメラつきのスマートフォン。自撮りを求められることがある | 対応する国・地域の政府発行の身分証(実物)と、鮮明に撮影できる機器。求められた場合は自撮りも |
| 組織の確認 | 組織の正式名称・住所・事業者の登録番号 | 正式名称、登録住所または事業所の住所と連絡先、利用目的の情報。求められた場合は納税者番号や事業者の登録番号、公的な書類 |
| 1人が確認できる数 | ヘルプ記事に記載なし | 1つのアカウントか組織だけ。何度も試すとアクセスが止められることがある |
| 通らなかったとき | やり直しても通らなければ、ヘルプのフォームから問い合わせる | 結果を手作業で覆すことはできず、個別の判断の理由も開示されない。承認されなくても、いまの利用範囲のまま使い続けられる |
※各社の公式ヘルプ記事(2026年10月21日確認)。
目立つ違いは、OpenAI が「1人が確認できるのは1つのアカウントか組織だけ」と明記している点です。会社の検証用と個人の開発用でアカウントを分けている人は、どのアカウントで確認を受けるかを先に決めておく必要があります。Claude のヘルプ記事にはこの制限の記載がありませんが、身分証は1人に1つ結びつくものなので、同じように「どのアカウントで受けるか」を決めてから手続きすると迷いません。
アカウントの停止と異議申し立て(公式)
同じヘルプ記事には、アカウントの停止(ban)についての説明もあります。Anthropic は、利用ポリシー(Usage Policy)や利用規約(Terms of Service)への違反を繰り返した場合などに、アカウントを停止することがあります。誤って停止されたと考える場合は、異議申し立てのフォームから申請すると、Safeguards(安全対策)のチームが調べる仕組みです。
エンジニアへの影響
実装の観点から、影響は主に3つあります。
1. API と Claude Console への影響は、ヘルプ記事に書かれていない
公式のヘルプ記事は、API や Claude Console について触れていません。「API キーが使えなくなる」といった話は、いまのところ公式の根拠がありません。チームで使う場合は、確認を求められたときに誰がどの身分証で手続きするかを、あらかじめ決めておくと慌てずに済みます。
2. 個人として受けるか、組織として受けるか
組織として確認を受けるには、組織の正式名称・住所・事業者の登録番号が必要です(公式)。個人名義のアカウントを業務で使っている場合は、個人と組織のどちらで確認を受けるのか、組織なら誰が手続きするのかを、社内で先に決めておきましょう。登録番号の誤りは、確認が通らない原因の一つとして公式に挙げられています。
3. 利用ポリシーと利用規約の見直し
身分確認の目的には「利用ポリシーの徹底」が含まれていて、違反を繰り返すとアカウントの停止につながることがあります。チームで Claude を使う場合は、利用ポリシーと利用規約を改めて読み、社内のルールと食い違いがないかを確かめておくよい機会です。
今後の展望
Anthropic は、確認を「一部の利用場面」から順に広げていると説明しています。どの機能が対象になるかは今後も変わりうるので、対象の範囲はヘルプ記事の更新で確かめるのが確実です。
開発者としては、Claude だけでなく、併用している他の AI サービスの確認の条件も把握しておくことをお勧めします。必要な書類、組織の情報、1人で確認できるアカウントの数は、サービスごとに違います。上の比較表のように、使っているサービスの条件を一覧にしておくと、確認を求められたときに慌てずに済みます。
Source: Identity verification on Claude (Hacker News, 638pt)
この記事のデータの出典:Anthropic ヘルプセンター「Identity verification on Claude」、OpenAI ヘルプセンター「API Organization Verification」(いずれも2026年10月21日確認)

