行政書士は独立開業が基本の街の法律家
行政書士は官公署への許認可申請や契約書・各種書類の作成を担う士業PRで、独立開業が基本の働き方です。扱える業務範囲が非常に広い反面、収入は業務分野の選び方と営業力で大きく変わるのが実態です。日本行政書士会連合会によると、行政書士の会員は55,877人、行政書士法人の会員は1,873(2026年10月1日現在)です。本記事では、同連合会の報酬額統計と行政書士試験研究センターの試験データをもとに、業務分野・資格取得・兼業としての活かし方を整理します。
収入のリアル
行政書士は収入の分布が非常に幅広いのが特徴です。開業直後は売上が小さい人が多い一方、専門分野を持って事務所を大きくする人もいます。ただし、行政書士の年収を全国で調べた公的な統計は見当たらないため、以前の版に載せていた「年収目安」は根拠を示せず削りました。代わりに確かめられるのが、1件あたりの報酬(料金)です。日本行政書士会連合会は5年に1度、会員が実際に受け取った報酬額を調べて公表しています。
| 業務 | 回答者数 | 平均 | 最も多かった額 |
|---|---|---|---|
| 建設業許可申請(法人・新規・知事) | 512人 | 151,341円 | 165,000円 |
| 建設業許可申請(法人・更新・知事) | 767人 | 82,408円 | 55,000円 |
| 在留資格認定証明書交付申請(就労資格) | 194人 | 120,174円 | 110,000円 |
| 在留資格認定証明書交付申請(経営・管理) | 103人 | 207,563円 | 220,000円 |
| 遺産分割協議書の作成 | 705人 | 69,752円 | 55,000円 |
| 遺言書の起案及び作成指導 | 459人 | 76,855円 | 50,000円 |
| 会社設立手続 | 287人 | 106,371円 | 110,000円 |
| 契約書作成 | 370人 | 39,406円 | 33,000円 |
※日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」(令和8年1月実施)。金額は消費税込み・立替金を含まない。
回答者が最も多いのは遺産分割協議書の作成(705人)と建設業許可の法人更新(767人)で、多くの行政書士が扱う定番の業務だと分かります。1件の報酬は、在留資格の「経営・管理」や建設業許可の新規申請のように15万〜20万円台の業務もあれば、契約書作成のように4万円前後の業務もあります。年収は「どの業務を、年に何件受けるか」で決まるので、単価と件数の両方を考えて専門分野を選ぶことが大切です。同じ業務でも、最も高い回答と最も安い回答の差は大きく、事務所ごとに料金の決め方が違うことも分かります。
稼げる業務分野の例
| 分野 | 特徴 |
|---|---|
| 建設業許可 | 継続的な更新需要・法人顧客 |
| 入管・在留資格 | 需要拡大・専門性が高い |
| 相続・遺言 | 高齢化で需要増・他士業連携 |
| 許認可・補助金 | 事業者向けで単価が安定 |
資格取得の難易度
行政書士試験は法令科目と一般知識から出題される国家資格で、独学でも目指せますが法律の基礎学習が必要です。行政書士試験研究センターによると、令和7年度(2025年11月9日実施)は受験者50,163人に対し合格者7,292人で、合格率は14.54%(前年度は12.90%)でした。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 47,870人 | 5,353人 | 11.18% |
| 令和4年度 | 47,850人 | 5,802人 | 12.13% |
| 令和5年度 | 46,991人 | 6,571人 | 13.98% |
| 令和6年度 | 47,785人 | 6,165人 | 12.90% |
| 令和7年度 | 50,163人 | 7,292人 | 14.54% |
※行政書士試験研究センター「最近10年間における行政書士試験結果の推移」「令和7年度行政書士試験実施結果の概要」(2026年1月28日)。
試験は47都道府県の62試験場で行われ、東京都では13,133人が受けて2,048人が合格しています(合格率15.59%)。令和7年度の合格者を年代別に見ると、30歳代が1,923人で最も多く、40歳代1,867人、20歳代1,517人、50歳代1,445人と続きます。年代ごとの合格率は20歳代が約18.3%、30歳代が約19.4%で、50歳代は約11.7%でした。社会人になってから受ける人が多い試験で、合格者の平均得点は197点(300点満点)です。
合格の基準は、300点満点のうち全体で180点以上、そのうえで法令等科目(244点満点)で122点以上、基礎知識科目(56点満点)で24点以上を取ることです。法令等科目は5肢択一式40問(160点)、多肢選択式3問(24点)、記述式3問(60点)で構成され、記述式は1問20点と配点が大きくなっています。基礎知識科目で24点に届かないと、全体の点数が足りていても不合格になるため、法令だけでなく基礎知識の対策も欠かせません。受験者のうち女性は16,850人、合格者は2,193人で、女性の合格者は前年度から27.72%増えました。
司法書士PRや宅建PR士など他資格との掛け合わせで業務範囲と信頼性を広げる人も多くいます。
副業・兼業としての活かし方
行政書士は会社員を続けながら登録・兼業することも可能で(勤務先の規定確認は必要)、相続・契約書作成など小さく始めて実績を積む人もいます。将来の独立に向けた準備として活用する道もあります。
報酬額統計で、個人からの依頼が多い書類作成の業務を見ると、内容証明郵便の作成は平均26,960円(回答者179人)、契約書作成は平均39,406円(370人)、離婚協議書の作成は平均60,645円(78人)でした。1件あたりの単価は数万円なので、兼業で始めるなら、こうした業務で経験を積みながら、建設業許可や在留資格のような単価の高い分野の知識を少しずつ身につけていく進め方が考えられます。
他の士業は社労士・宅建独学合格ロードマップの記事や、資格・専門職キャリアまとめから辿れます。
この記事のデータの出典
- 日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」・組織概要の行政書士データ(2026年10月1日現在)
- 行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験合否判定基準」「都道府県別試験結果一覧」「令和7年度行政書士試験実施結果の概要」「最近10年間における行政書士試験結果の推移」「最近3年間における受験者・合格者の属性」

