保健師の転職を考えはじめると、「行政と企業、どっちがお給料はいいの?」がまず気になりますよね。わかります。ただ、ネットで見かける働く場ごとの年収の数字は、出どころがはっきりしないものがほとんどなんです。この記事では、国の統計で確かめられる数字だけを使って、保健師の年収と、働く場ごとの違いの確かめ方を一緒に見ていきます。
保健師は「予防」と「健康づくり」の専門職
保健師は、看護師PRの資格に加えて保健師の国家資格を持ち、病気になる前の予防や、地域・職場の健康づくりを受け持つ専門職です。病棟の看護師のような夜勤のシフトが前提の仕事は少なく、働く場は大きく4つに分かれます。
| 働く場 | 主な仕事 | 採用のされ方 |
|---|---|---|
| 行政(都道府県・市区町村) | 保健所・保健センターでの健康相談、乳幼児健診、感染症の対応、地域の健康づくり | 自治体の職員採用試験(地方公務員PR) |
| 産業(企業) | 社員の健康診断のあとの保健指導、メンタルヘルスの相談、職場の健康管理の仕組みづくり | 企業や健康保険組合の個別の募集 |
| 病院・健診機関 | 健診・人間ドックの保健指導、退院後の生活の支援、地域連携 | 病院・健診機関の個別の募集 |
| 学校・大学 | 学生・教職員の健康管理、健康相談 | 学校法人・大学の個別の募集 |
行政は試験で採用が決まる公務員、ほかは勤め先ごとの個別の募集、というところがいちばん大きな違いです。お給料の決まり方もここで分かれます。
保健師の年収相場(国の統計)
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)によると、保健師(推計1万5,060人)の全国平均年収は551.4万円です(平均年齢42.4歳・平均勤続9.6年)。令和7年6月分の「きまって支給する現金給与額」を12倍し、令和6年の1年間の賞与などを足した金額で、残業代や深夜手当などの割増賃金を含みます。職業情報サイト job tag の賃金(年収)と同じ調査・同じ計算です。
年齢別の年収
| 年齢 | 年収 | 推計人数 |
|---|---|---|
| 25〜29歳 | 485.4万円 | 1,630人 |
| 30〜34歳 | 459.0万円 | 1,830人 |
| 35〜39歳 | 573.2万円 | 2,310人 |
| 40〜44歳 | 542.6万円 | 2,000人 |
| 45〜49歳 | 558.1万円 | 2,850人 |
| 50〜54歳 | 575.7万円 | 1,860人 |
| 55〜59歳 | 726.5万円 | 1,490人 |
※厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」第5表(職種(小分類)、年齢階級別)から当サイトが計算(確認日2026年10月22日)。年収は「きまって支給する現金給与額(6月分)×12+年間賞与その他特別給与額」で、全国・企業規模10人以上・男女計の平均です。残業代や深夜手当などの割増賃金を含みます。推計人数が1,000人に満たない年齢階級は載せていません。
会社の規模別の年収
| 会社の規模 | 年収 | 推計人数 |
|---|---|---|
| 1,000人以上 | 599.3万円 | 5,680人 |
| 100〜999人 | 527.9万円 | 8,460人 |
| 10〜99人 | 470.9万円 | 910人 |
※厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」第1表(職種(小分類)、性別。企業規模別の列)から当サイトが計算(確認日2026年10月22日)。年収は「きまって支給する現金給与額(6月分)×12+年間賞与その他特別給与額」で、全国・企業規模10人以上・男女計の平均です。残業代や深夜手当などの割増賃金を含みます。
大きな会社・法人ほど高く出ています。男女別では男性が489.1万円、女性が553.6万円で、差は64.5万円です。推計の労働者数で見ると、保健師の96.5%が女性です。年齢・勤続年数・勤務時間の違いも含んだ平均なので、同じ条件で比べた差ではありません。
全国平均は、国の統計の職種別の一覧(資格・専門職の年収(国の統計))でも、看護師・助産師などと並べて見られます。
行政・産業・病院ごとの年収は、公的な統計がありません
ここ、いちばん大事なところです。保健師の年収を「行政」「企業」「病院」「学校」に分けて集計した公的な統計は見当たりません。上の全国平均は、会社の規模で分けた数字はあっても、働く場の種類で分けた数字はないんです。
それと、賃金構造基本統計調査は、民営の事業所(常用労働者5人以上)と公営の事業所(10人以上)を対象にした調査で、役所の仕事そのもの(日本標準産業分類の「公務」)は調査する産業に入っていません(令和7年賃金構造基本統計調査の概況(調査の概要))。勤め先によって統計に入るかどうかが変わるので、自治体で働く保健師のお給料は、その自治体が出している資料で確かめるのがいちばん確実です。
なので、働く場ごとの比較は「平均の数字を並べる」のではなく、「候補先の条件を自分で取り寄せて並べる」形でやるのがおすすめです。やり方は次の2つの節にまとめました。
行政保健師のお給料の確かめ方
- 職員採用試験の募集要項:保健師の区分の初任給(学歴ごとの月額)が書かれています。経験者採用では、前の職歴をどのくらい加算するかの説明があることも多いです。
- 自治体が公表している給与の資料:地方公務員法にもとづいて、各自治体は職員の給与の状況を公表しています。自治体のサイトで「給与・定員管理等について」などの名前で載っていることが多く、職種ごとの平均給料月額や、手当の種類が確かめられます。
- 手当の中身:地域手当・扶養手当・住居手当・期末勤勉手当(ボーナス)の支給月数は自治体ごとに違います。月額だけで比べず、年間で足し上げてみてください。
企業・病院・学校の求人の見方
個別の募集では、同じ「保健師」でも条件の書き方がばらばらです。私なら次の順で見ます。
- 基本給と手当を分けて書いてあるか(「月給◯万円」の中に固定残業代が入っていないか)
- 賞与が「年◯か月分」と実績で書かれているか
- 雇用形態(正社員・契約・嘱託)と、契約の期間・更新の条件
- 産業保健師なら、担当する事業所の数と社員数、ひとり配置かチームか
- 健診機関なら、繁忙期の時期と残業の扱い
上場企業で働く場合は、その会社の有価証券報告書に社員全体の平均年収が載っています。ただしこれは全職種の平均なので、保健師の年収そのものではない点に気をつけてくださいね。
保健師になるには・国家試験の結果
保健師になるには、保健師の養成課程(大学の保健師課程や養成所など)を修了して、保健師国家試験に合格し、免許を受ける必要があります。働くには看護師の免許も必要です。
厚生労働省の発表では、第112回保健師国家試験(2026年2月実施)は、受験者7,467人のうち合格者6,502人で、合格率は87.1%でした。新卒者に限ると、受験者7,109人のうち合格者6,392人、合格率89.9%です(第112回保健師国家試験の合格発表(厚生労働省))。
看護師から保健師へ移るときのチェックリスト
- 保健師の免許を持っているか(持っていない場合は養成課程の入学条件と期間)
- 行政を目指すなら、受けたい自治体の採用試験の年齢の条件と試験の時期
- 夜勤手当がなくなるぶん、月々の手取りがどう変わるか(今の給与明細の夜勤手当を差し引いて計算)
- 産業保健・母子保健・精神保健など、どの分野を深めたいか
看護師としての転職の進め方は看護師の転職完全ガイド、看護師の年収の全国平均は看護師の年収のリアルで解説しています。医療・福祉系の資格職全体は資格・専門職キャリアまとめから辿れます。
訂正・作り直し(2026年10月30日):この記事の以前の版では、働く場ごとの「年収目安」(例: 行政400〜600万円、産業保健師450〜700万円、病院・学校380〜520万円)と、「産業保健師は年収高め」「行政は長期的には高めになる」という説明を載せていました。出典を示せないため削除し、記事を作り直しました。年収は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の保健師の区分の数字(全国平均・年齢別・会社の規模別)に置き換え、働く場ごとの違いは確かめ方の説明にしました。

