理系の最大の進路選択『院進 vs 学部就職』
理系学生にとって最大の進路選択が『大学院進学(院進) vs 学部卒で就職』です。学部卒で就職すれば2年早く社会人になれますが、修士卒は研究職・大手メーカー研究開発・外資テックへの道が開けます。国の統計をもとにした労働政策研究・研修機構(JILPT)の「ユースフル労働統計2025」の試算では、学校を出てから60歳まで正社員で働いた場合の生涯賃金(退職金を含めない・2024年)は、男性で大学卒2億6,280万円、大学院卒3億2,380万円、差は6,100万円でした。女性は大学卒2億990万円、大学院卒2億6,250万円で、差は5,260万円です。ただし全分野・全職種の平均から計算した試算で、進む業界や職種で差は大きく変わります。本記事では、国の統計で初任給・年齢別の月給・費用を確かめたうえで、キャリアと適性まで比較します。
院進 vs 学部就職 5軸比較
| 軸 | 学部就職 | 修士進学 | 博士進学 |
|---|---|---|---|
| 就職時期 | 22歳 | 24歳 | 27歳〜 |
| 新規学卒者の月給(2025年) | 26万2,300円 | 29万9,000円(統計は修士・博士をまとめた大学院) | |
| 生涯賃金(男性・60歳まで・退職金なし) | 2億6,280万円 | 3億2,380万円(大学院卒・24歳で就職として計算) | |
| 狙える職種 | 事務系・現業中心 | 研究開発・上位職種 | 研究職・アカデミア |
| 国立大学の授業料(標準額) | — | 年53万5,800円×2年+入学料28万2,000円 | 年53万5,800円×3年+入学料 |
※月給は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の新規学卒者の学歴別賃金(男女計)、生涯賃金はJILPT「ユースフル労働統計2025」表21-1、授業料は文部科学省の国立大学の標準額(令和7年度。各大学は標準額の120%まで設定でき、大学ごとに違います)。私立大学の学費は大学ごとに違うため載せていません。「狙える職種」は編集部の整理です。
年齢別に見る大学卒と大学院卒の月給(国の統計)
入口の差は月3万6,700円ほどですが、年齢が上がるほど差は広がります。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の学歴別の月給(所定内給与額・男女計)は次のとおりです。
| 年齢 | 大学卒 | 大学院卒 | 差 |
|---|---|---|---|
| 25〜29歳 | 29万6,400円 | 33万5,000円 | 3万8,600円 |
| 30〜34歳 | 34万300円 | 40万6,100円 | 6万5,800円 |
| 40〜44歳 | 42万5,300円 | 55万3,700円 | 12万8,400円 |
| 50〜54歳 | 49万4,900円 | 64万8,300円 | 15万3,400円 |
※厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況 第3表(学歴、性、年齢階級別賃金)。賞与は含みません。
40代以降で月に12万円以上の差がつくことが、生涯賃金の差の大きな部分を占めています。ただしこれは、大学院に進んだ人が研究開発や専門職に多く就いていることなども含んだ平均です。「大学院に行けば誰でも同じだけ上がる」という意味ではないので、自分が進みたい職種で修士卒が求められているかを、志望先の採用ページで確かめるのが先です。
なお、2025年の新規学卒者の月給は前年より大学卒で5.6%、大学院卒で4.0%上がっていて、入口の差は前年より縮まりました(同調査の第10表)。初任給の引き上げは学部卒の方が大きかった年です。
大学院に進む人の数(学校基本統計)
文部科学省の「令和7年度学校基本統計」(2025年12月公表)によると、2025年3月に大学(学部)を卒業した58万4,304人のうち、大学院などに進学したのは7万4,329人(12.7%)で、就職者は44万9,638人(77.0%)でした。修士課程を修了した7万7,633人では、就職者が6万674人(78.2%)、博士課程などへの進学が8,670人(11.2%)です。修士を出た人の多くは企業などに就職していて、博士に進むのは1割ほどだと数字から分かります。
業界別 院進の必要度
| 業界 | 院進必要度 | 備考 |
|---|---|---|
| 研究開発(メーカー) | ★★★★★(事実上必須) | 修士卒が前提 |
| 製薬・化学・素材 | ★★★★★ | 修士〜博士が標準 |
| 外資テック(GAFAM) | ★★★★(推奨) | 修士で技術職に有利 |
| AI・データサイエンスPR | ★★★★(推奨) | 研究経験が評価されやすい |
| SI・SES | ★(不要) | 学部卒で十分 |
| 事務系(営業・企画) | ★(不要) | 学部卒の方がむしろ有利 |
| コンサル・金融 | ★★(中立) | 学部卒/修士卒問わず |
| 商社 | ★★(中立) | むしろ学部卒の方が多い |
※院進の必要度は編集部の見方です。会社によっては修士卒と学部卒で初任給や採用区分を分けているので、志望先の募集要項で確かめてください。
院進すべき人 / 学部就職すべき人
| こんな人 | 第一候補 |
|---|---|
| 研究開発職に就きたい | 院進(修士以上) |
| 製薬・化学・素材の技術職 | 院進(修士・博士) |
| 大学/研究機関で研究 | 院進(博士) |
| AI・データサイエンス上位 | 院進(修士推奨) |
| 事務系・営業・企画 | 学部就職 |
| 商社・金融・コンサル | 学部就職 |
| 早く社会人として独立 | 学部就職 |
| SI・SES・Web系自社開発 | 学部就職で十分 |
院進する場合の判断軸
| 判断軸 | 確認ポイント |
|---|---|
| 研究分野の将来性 | AI・量子・バイオ・素材など成長分野か |
| 指導教員 | 論文業績・指導力・就職支援 |
| 研究室の文化 | OB訪問で実態確認 |
| 院進後の進路 | 業界・研究機関への進路実績 |
| 費用と奨学金 | 日本学生支援機構・大学独自・企業派遣 |
| 志望先の初任給の区分 | 修士卒と学部卒で初任給や採用区分を分けているか |
理系の院進は「目指す職種・業界」によって判断するのが鉄則です。研究開発・製薬・AIなら院進、事務系・SI・商社なら学部卒で問題ありません。理系の就職先の難易度は理系の就職偏差値ランキング、AI志望者向けはAIエンジニア完全ロードマップを参照してください。
この記事のデータの出典
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)「ユースフル労働統計2025」21 生涯賃金など生涯に関する指標(表21-1)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(学歴別にみた賃金・新規学卒者の学歴別にみた賃金)
- 文部科学省「国立大学法人等に関する参考資料」(令和7年度の授業料・入学料の標準額)
- 文部科学省「令和7年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値」(2025年12月26日公表)


