「在宅勤務の人だけ手当が増えて、出社組との待遇差が広がっている」——2026年7月、こうした投稿がX(旧Twitter)で大きな反響を呼んでいます。リモート勤務者が優遇され、出社を続ける側が損をしているという不公平感の声です。
この「リモート組だけ得している」という感覚は、実際のデータで裏付けられるのでしょうか。当サイトが公開情報をもとに整理している就職偏差値ランキングの511社分を「働き方」で分類し、平均年収・平均偏差値を突き合わせて検証しました。
結論:先に3行で
- 「フルリモート可」を明記する企業は511社中わずか4社(0.8%)。多数派はハイブリッド勤務(351社・68.7%)で、「在宅か出社か」の二択自体が実態に合っていない
- フル出社が必須の企業(34社)の平均年収は847万円で、ハイブリッド企業(802万円)より高い。財務省・日本銀行・外資系投資銀行など、超難関だがフル出社の企業が押し上げている
- 「リモートか出社か」より「業界・企業フェーズ・偏差値レンジ」の方が年収差に大きく影響する。働き方だけで得・損を語るのは早計
SNSで話題の「在宅組だけ厚遇」論
今回話題になっているのは、在宅勤務者への手当が増額される一方、出社を続ける社員との待遇差が拡大しているという趣旨の投稿です。テレワーク手当・通信費補助といった制度が企業ごとにばらつく中、「不公平だ」と感じて転職を検討する人がいるという内容で、共感の声が多く集まりました。
ただしこれは個別企業の手当制度の話であり、「リモートワークができる会社ほど条件がいい」という一般化にそのまま当てはまるとは限りません。実際に「働き方」と「年収・難易度」の関係を、企業単位のデータで確認してみます。
511社データで検証:働き方別の件数・年収・偏差値
当サイトの就職偏差値ランキングに収録する511社の働き方表記を5区分に分類し、区分ごとの企業数・シェア・平均就職偏差値・年収レンジ中央値の平均を集計しました(2026-07-17時点の掲載データ。年収は各社の公開レンジの中央値をもとにした参考値)。
| 働き方区分 | 企業数 | シェア | 平均偏差値 | 平均年収目安 |
|---|---|---|---|---|
| その他(転勤・現場・プロジェクト型等) | 101社 | 19.8% | 64.1 | 933万円 |
| リモート可(制限あり) | 21社 | 4.1% | 62.3 | 905万円 |
| フルリモート可 | 4社 | 0.8% | 62.8 | 881万円 |
| フル出社 | 34社 | 6.7% | 65.4 | 847万円 |
| ハイブリッド | 351社 | 68.7% | 63.5 | 802万円 |
見えてくるのは、「フル出社の企業は年収が低い」という単純な図式は成立しないという点です。むしろフル出社が必須の企業群の平均年収(847万円)は、多数派であるハイブリッド企業(802万円)を上回っています。
平均年収が最も高い「その他」区分(101社)には、転勤を伴う総合職や海外駐在ポジション、コンサルのプロジェクト型勤務などが含まれます。年収水準を左右しているのは「在宅か出社か」という軸よりも、業界特性や職務内容である可能性が高いといえます。
出社必須は本当に「損」なのか?
フル出社に分類される企業の内訳を見ると、財務省(偏差値78)、日本銀行(偏差値74・年収600〜1300万円)、ブラックストーン・グループ・ジャパン(偏差値76・年収1000〜3000万円)、バンク・オブ・アメリカ(偏差値74・年収800〜2000万円)など、就職難易度・年収ともに最上位クラスの組織が並びます。
中央省庁や外資系投資銀行のように対面でのOJT・機密性・チーム連携を重視する組織ほど出社を前提にしている一方、そうした組織は選考難易度も報酬水準も高い傾向があります。「出社=待遇が悪い」という単純化は、少なくとも当サイトが収録する上位企業群には当てはまりません。
「フルリモート可」はまだ0.8%——実態は限定的
一方で「フルリモート可」と明記されている企業はSmartHR・freee・LayerX・サイボウズの4社(511社中0.8%)にとどまります。いずれもSaaS・IT系のベンチャー〜メガベンチャーで、偏差値は62〜64、年収レンジは500万〜1,400万円台と、業界内では標準〜やや高水準です。
「リモート可(出社日数の指定などがある)」まで含めても25社(4.9%)で、SNSで語られるほど「フルリモートが当たり前」という状況には、少なくとも当サイト収録企業の範囲では至っていません。
個別企業がテレワーク手当を増額するケースはもちろん存在しますが、それは各社の人事施策の違いによるもので、「フルリモート企業だから年収が高い」「出社企業だから損」という業界横断の法則ではない、というのが511社データから読み取れる結論です。
転職・オファー確認チェックリスト
働き方の「不公平感」で消耗しないために、転職活動やオファー面談で確認しておきたいポイントです。
- 「リモート可」の実態(週何日出社が必須か、部署・役職で条件が変わらないか)
- 在宅勤務手当・通信費補助の有無と支給条件(全社員一律か、対象者限定か)
- 評価制度が勤務形態(在宅/出社)で実質的に差がついていないか
- 将来的な働き方方針の変更リスク(出社回帰の動きが社内にないか)
- 年収レンジは働き方単独ではなく、業界・偏差値レンジと合わせて確認する
働き方の条件は求人票だけでは分からないことも多く、面談や口コミで実態を確認したうえで判断することをおすすめします。
