国家公務員の採用試験は、人事院が毎年行っています。この記事では、人事院が公表している2026年度の試験結果と試験の仕組み、採用後の給与のモデル(人事院勧告のモデル給与例)を、一次情報だけで整理します。数字にはすべて出典をつけ、2026年10月22日に確認しました。
国家公務員試験の区分
総合職(院卒者試験・大卒程度試験)
- 受験案内の言葉では「政策の企画及び立案又は調査及び研究に関する事務」を担う係員の採用試験です
- 2026年度の大卒程度試験の区分: 政治・国際・人文、法律、経済、人間科学、デジタル、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境、教養
- 院卒者試験の区分: 行政、人間科学、デジタル、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境
一般職(大卒程度試験)
- 「政策の実行やフォローアップなどに関する事務」を担う係員の採用試験です
- 2026年度の区分: 行政、デジタル・電気・電子、機械、土木、建築、物理、化学、農学、農業農村工学、林学、教養
専門職
- 国税専門官・財務専門官・労働基準監督官・食品衛生監視員・法務省専門職員(人間科学)・皇宮護衛官・航空管制官・海上保安官などの採用試験があります
- 2026年度は刑務官採用試験(大卒程度試験)が新しく始まり、合格者は196人でした
経験者採用試験
- 民間企業などで働いた経験のある人を、係長級などで採用する試験です(くわしくは後半で)
2026年度の申込者数と合格者数
人事院が公表した2026年度の結果です。「合格率」という言い方はされておらず、申込者数を最終合格者数で割った「申込倍率」と、実際に受けた人で割った「受験倍率」が示されています。
| 試験 | 申込者数 | 最終合格者数 | 申込倍率 | 受験倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 総合職(春)大卒程度試験 | 11,211人 | 1,371人 | 8.2倍 | 6.5倍 |
| 総合職(春)院卒者試験 | 1,275人 | 650人 | 2.0倍 | 1.5倍 |
| 一般職 大卒程度試験 | 26,429人 | 8,425人 | 3.1倍 | 2.3倍 |
総合職(春)の合格者のうち女性は722人で、割合は35.7%と過去最高でした。一般職(大卒程度)の合格者に占める女性の割合は46.9%です。前の年度と比べると、総合職(春)の大卒程度試験は申込者が増え(10,740人→11,211人)、合格者も増えた(1,153人→1,371人)ので、申込倍率は9.3倍から8.2倍に下がっています。
出典: 人事院「2026年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表」(2026年5月29日)、「2026年度国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)及び専門職試験(大卒程度試験)の合格者発表」(2026年8月12日)。
合格しても、それだけでは採用にならない
ここは誤解しやすいところです。最終合格者は「採用候補者名簿」に得点順で載り、各府省はこの名簿の中から面接などを行って採用者を決めます。採用されるには、合格とは別に「官庁訪問」で各府省の面接を受ける必要があります。名簿の有効期間は、総合職(教養区分を除く)と一般職(教養以外の区分)が5年間です(人事院の2026年度受験案内)。
日程と受験資格
2026年度の日程(実施済み)
- 総合職(春): 申込み 2月2日〜2月24日、第1次試験 3月15日、最終合格者発表 5月29日
- 一般職(大卒程度): 申込み 2月19日〜3月23日、第1次試験 5月31日、最終合格者発表 8月12日
2027年度の日程(人事院が2026年3月5日に公表)
- 総合職(春): 第1次試験 2027年2月28日(日)、最終合格者発表 5月下旬
- 一般職(大卒程度): 第1次試験 2027年5月2日(日)、最終合格者発表 7月上旬
- 専門職(大卒程度): 第1次試験 2027年4月25日(日)
- 申込みの受付期間などは、2026年11月中旬をめどに公表される予定です
2026年度と比べると、総合職は約2週間、一般職は約4週間早くなっています。2027年の春に受ける人は、勉強の計画を前倒しにしておきたいところです。
受験資格(年齢)
2026年度の総合職(大卒程度・教養区分を除く)と一般職(大卒程度・教養以外の区分)は、1996年4月2日〜2005年4月1日生まれの人が受けられました。2026年4月1日の時点で21歳以上30歳未満にあたります。これより若くても、大学を卒業した人や卒業見込みの人は受けられます(一般職は短大・高専の卒業者も含みます)。
試験の中身
総合職(大卒程度試験・教養区分を除く)
| 段階 | 試験種目 | 題数 | 解答時間 | 配点比率 |
|---|---|---|---|---|
| 第1次 | 基礎能力試験(多肢選択式) | 30題 | 2時間20分 | 2/15 |
| 第1次 | 専門試験(多肢選択式) | 40題 | 3時間30分 | 3/15 |
| 第2次 | 専門試験(記述式) | 2題 | 3時間 | 5/15 |
| 第2次 | 政策論文試験 | 1題 | 2時間 | 2/15 |
| 第2次 | 人物試験(個別面接) | ― | ― | 3/15 |
基礎能力試験は、知能分野24題(文章理解・判断・数的推理など)と知識分野6題(時事・情報など)です。英語は、TOEFL(iBT)・TOEIC L&R(公開テスト)・IELTS・英検のスコアに応じて、総得点に15点か25点が加算されます。
一般職(大卒程度試験・行政区分)
| 段階 | 試験種目 | 題数 | 解答時間 | 配点比率 |
|---|---|---|---|---|
| 第1次 | 基礎能力試験(多肢選択式) | 30題 | 1時間50分 | 2/9 |
| 第1次 | 専門試験(多肢選択式) | 40題 | 3時間 | 4/9 |
| 第1次 | 一般論文試験 | 1題 | 1時間 | 1/9 |
| 第2次 | 人物試験(個別面接) | ― | ― | 2/9 |
どちらも人事院の2026年度受験案内のとおりです。区分によって科目が変わるので、受ける区分の受験案内で出題分野を確かめてください。
採用後の給与(人事院勧告のモデル給与例)
国家公務員の給与は法律で決まり、人事院が毎年、民間の給与と比べて改定を勧告します。人事院は勧告の資料に、役職と年齢ごとの「モデル給与例」を載せています。2026年8月の勧告の資料から抜き出しました。勧告後の額は、勧告どおりに法律が改正された場合の額です。
| 勤務先・役職(年齢) | 年間給与(勧告前) | 年間給与(勧告後) |
|---|---|---|
| 地方機関の係員(22歳・一般職試験〈大卒〉の初任給) | 384.4万円 | 401.4万円 |
| 地方機関の係長(35歳) | 506.6万円 | 525.9万円 |
| 地方機関の課長(50歳) | 708.5万円 | 730.6万円 |
| 本府省の係員(22歳・総合職試験〈大卒〉の初任給) | 494.2万円 | 514.6万円 |
| 本府省の係長(28歳) | 588.4万円 | 610.2万円 |
| 本府省の課長補佐(35歳) | 832.0万円 | 861.0万円 |
| 本府省の課長(50歳) | 1,447.3万円 | 1,488.3万円 |
| 本府省の局長 | 1,938.6万円 | 2,003.1万円 |
| 事務次官 | 2,523.9万円 | 2,609.0万円 |
この額には、地域手当(本府省は20%、地方機関は支給なしで計算)や本府省業務調整手当などが入っています。勤務地や手当で実際の額は変わるので、あくまで人事院が示したモデルとして見てください。初任給の月額で見ると、一般職(大卒)は勧告前232,000円、勧告後241,500円で、勧告では初任給を一律9,500円引き上げるとしています。
出典: 人事院「令和8年人事院勧告」の「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」(2026年8月)。
勉強の進め方
- 準備のしかたには、予備校の通学・通信講座や、過去問・参考書での独学などがあります。人事院は第1次試験の多肢選択式の正答番号を公表しています
- 講座の料金は学校とコースごとに違うので、各校の公式の料金表で確かめてください
- 講座によっては教育訓練給付の対象になっていることがあります。対象かどうかは 厚生労働省の教育訓練講座検索システム で講座名を入れて確かめられます
入ったあとのキャリア
- 人事異動で部署が変わりながら経験を積んでいきます。異動の頻度や地方機関・海外で働く機会は府省や職種で違うので、官庁訪問や説明会で聞いておくと安心です
- 人事院の「行政官長期在外研究員制度」では、各府省の職員を原則2年間を限度に海外の大学院へ派遣しています。2024年度からは1年制の大学院に1年だけ行くコースもでき、2024年度は148人が派遣されました(人事院の年次報告書)
社会人から国家公務員になるには
経験者採用試験(係長級〈事務〉)
2026年度は府省合同のA区分とB区分で行われています。受験資格は年齢ではなく、大学卒業などから何年たったかで決まります(大学卒業の場合、A区分は2年、B区分は7年)。日程は第1次試験が10月4日、第1次試験の合格者発表が10月30日、最終合格者発表はA区分が11月20日、B区分が12月4日の予定です。採用予定数は、2026年7月1日の時点でA区分が約11名、B区分が約181名でした(人事院「経験者採用試験(係長級/事務)」のページ)。
任期付職員・公募
専門的な知識を持つ人を、期間を決めて採用する公募もあります。各府省の公募は、人事院の「公募情報一覧」から探せます。
国家公務員と地方公務員の違い
- 国家公務員: 中央省庁と出先機関で働き、異動の範囲は全国や海外に広がります
- 地方公務員: 都道府県や市町村で働き、採用試験も給与も自治体ごとに決まります
給与を比べるときは、国は人事院勧告、地方は各自治体の給与条例(都道府県や政令指定都市などは人事委員会の勧告も)を見るのが確かです。
訂正(2026年10月22日): 以前の版では、出典を示せない学習時間・予備校の費用・役職別の年収の幅、実際とは違う試験の段階(第3次試験)や一般職の年齢の上限を載せていました。根拠を確かめられなかった数字は削り、試験と給与は人事院の公表資料に置き換えました。
出典・確認日
- 人事院「試験情報」と2026年度の受験案内(総合職試験・一般職試験〈大卒程度〉)
- 人事院「2027年度国家公務員採用試験の日程等について」(2026年3月5日)
- 人事院「経験者採用試験(係長級/事務)」
- 人事院 令和6年度 年次報告書(行政官長期在外研究員制度)
- 確認日はいずれも2026年10月22日です

