給与計算実務能力検定は、一般財団法人 職業技能振興会(内閣府認可)が認定している民間の検定です。給与計算は、社会保険や税金、労働法のルールに沿って毎月まちがいなく進める必要がある仕事なので、その知識を形にして示せるのがこの検定の良いところです。この記事では、1級・2級・3級の試験内容、2026年の日程と受験料、合格後の手続きを、職業技能振興会の公式情報(2026年10月22日に確認)で整理します。
3つの級の違い
| 級 | レベル(公式の説明の要約) | 出題と形式 | 時間 | 合格基準 | 受験料(税込) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1級 | 労働法令や税務も正しく理解し、複雑な制度やイレギュラーな給与体系にも対応できる | 知識問題30問(四肢択一・マークシート)+計算問題10問(記述式) | 120分 | 7割以上の得点、かつ計算問題を6割以上正解 | 11,000円 |
| 2級 | 基本的な給与計算をして明細を作れる。通常の月次の給与計算をこなせる一般職員のレベル | 知識問題35問+計算問題5問(どちらも四肢択一・マークシート) | 120分 | 7割以上の得点 | 8,800円 |
| 3級 | 給与計算の前提知識と専門用語、社会保険手続きの基本 | 知識問題25問+計算問題5問(三肢択一)。自宅などで受けるWEB試験 | 45分 | 7割以上の得点 | 10,000円(WEB講座・教材代・認定証の発行費用を含む) |
受験資格はどの級もありません。3級に受かっていなくても2級や1級を受けられ、1級と2級は同じ日に併願できます。2級と1級の受験料は、2014年の第1回から据え置いていた額を2025年11月の試験から改定したと、受験要項に書かれています。
出題範囲
- 2級: 給与計算の基本的な知識(社会保険の手続き・賞与の計算・社会保険の制度)と労働法令。出題科目は基礎知識(給与の仕組み・社会保険・税など)、法的知識(労働基準法など)、演習(給与計算・賞与計算など)
- 1級: 2級の範囲に加えて、イレギュラーなケースの賞与計算・退職金と、年末調整の知識
- 3級: 給与計算の前提になる知識と専門用語、社会保険手続きの基本
2級と1級の計算問題では、試験のときに「資料集」が配られます。試験問題と模範解答は公開されていません。
2026年の試験日程
- 2級は年2回(3月・11月)です。2026年は3月15日(第25回)と11月22日(第26回)に行われます
- 11月22日(日)は2級が10:00〜12:00、1級(第13回)が14:00〜16:00で、全国29会場で行われます
- 11月の回の出願は10月14日に締め切られています。試験結果は2027年1月6日に発表される予定です
- 3級はWEB試験なので、申し込んだあと案内に沿って随時受けられます(ID等の通知から60日以内に、WEB講座を受けてから受験)
これから2級を受けるなら、次は2027年3月の回です。日程は職業技能振興会のサイトで発表されるので、出願の締切とあわせて早めに確かめておきたいところです。
合格したあとの手続き
ここは見落としやすいところです。合格しただけでは、「給与計算実務能力検定○級」の名称を名刺や履歴書に書くことはできません。合格後に認定登録(認定登録料3,000円)をして、認定証を受け取る必要があります。
- 1級と2級は、2年ごとの更新制度がある資格です。有効期間内に更新しないと失効し、名称を使えなくなります
- 更新料は6,600円(更新料6,000円+送料600円・税込、2026年6月時点)です
- 有効期限の約6か月前に、更新の時期を知らせるメールが届く仕組みです
給与計算の主な業務
支給額の計算
- 月給・時給の基本給、残業代(割増賃金)、各種手当
- 賞与の計算
社会保険料
- 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の保険料の計算
- 標準報酬月額の決め方(算定・月額変更)
税金
- 所得税の源泉徴収と、住民税の特別徴収
- 年末調整(1級の出題範囲)
控除・明細・支払い
- 各種の控除の計算、給与明細の作成、振込の手続き
法改正に追いつくことが仕事の一部
給与計算の知識は、一度覚えたら終わりではありません。たとえば2025年(令和7年)の税制改正では、所得税の基礎控除の見直しなどが行われ、2025年12月に行う年末調整から対応が必要になりました。国税庁の説明では、主な中身は次のとおりです。
- 基礎控除を、合計所得金額に応じて見直し(たとえば合計所得金額132万円以下は95万円。改正前は48万円)
- 給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円に引き上げ
- 「特定親族特別控除」を新設(生計を一にする19歳以上23歳未満の親族などが対象で、1人につき最高63万円)
- 扶養親族などの所得要件を、合計所得金額48万円以下から58万円以下に
- 2026年分からは、新しい源泉徴収税額表で毎月の源泉徴収を行う
こうした変更は、毎月の計算や年末調整の手順に直接はね返ります。検定の勉強は、こうした制度の変わり目に「どこを直せばいいか」を判断する土台になると思います。
出典: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」(2026年10月22日確認)。
学び方
- テキストで独学: 職業技能振興会の案内では、テキストを使って自分のペースで学べるとされています。計算問題は資料集を見ながら解く形式なので、資料集の使い方に慣れておくと安心です
- 試験対策講座: 一般社団法人 実務能力開発支援協会が試験対策講座を開いています(講座の問い合わせ先は同協会)
- 3級のWEB講座: 3級は受験料にWEB講座と教材が含まれているので、入門として使えます
- 教育訓練給付: 講座によっては対象になっていることがあります。対象かどうかは 厚生労働省の教育訓練講座検索システム で確かめられます
取得後の活かし方
- 人事・経理・総務への就職・転職: 給与計算の知識があることを、職務経歴書で具体的に示せます(使ったことのある給与ソフト、担当した人数の規模、年末調整の経験など)
- 社会保険労務士事務所: 給与計算の受託をしている事務所で、実務を積む道があります
- 給与計算の受託会社(アウトソーシング): 複数の会社の給与計算をまとめて請け負う会社です
- 副業: 小さな会社の給与計算を手伝う形がありえます。ただ、社会保険労務士法(第27条)は、社会保険・労働保険の書類の作成や提出の代行などを、社労士でない人が報酬を得て仕事として行うことを制限しています。引き受ける作業の範囲は、契約の前に確かめておくと安心です
給与計算の仕事の収入を示す公的な統計は見当たらないので、この記事では載せていません。求人を比べるときは、募集要項の給与・手当と、担当する業務の範囲(給与計算だけか、社会保険の手続きや年末調整まで含むか)を見比べてみてください。
関連する資格
- 社会保険労務士(国家資格): 社会保険・労働保険の手続きや労務管理まで扱える資格です。給与計算の知識とつながりが深いです
- 日商簿記: 給与の仕訳や経理とのやり取りに役立ちます
- FP(ファイナンシャル・プランニング技能士): 税や社会保険の知識が重なります
ツール
実務では給与計算ソフトを使うことが多く、freee人事労務・マネーフォワード クラウド給与・弥生給与・ジョブカン給与計算などがあります。どれを使っていても、計算の元になるルール(割増賃金・保険料・源泉徴収)は同じなので、検定で学ぶ中身はそのまま役立ちます。
訂正(2026年10月22日): 以前の版では、「年間10,000人以上が受験」「累計受験者58,000人超」「2024年から3級新設」、級ごとの学習時間、給与計算の仕事の年収・副業の月収の目安、架空の人物(Aさん・Bさん・Cさん)の事例を載せていました。主催団体の公式情報で確かめられなかったため削除し、title も公式情報に合わせて直しました。主催団体の書き方も、認定団体(職業技能振興会)に合わせて直しました。
出典・確認日
- 一般財団法人 職業技能振興会「給与計算実務能力検定 1級」「2級」「3級」
- 職業技能振興会『給与計算実務能力検定』(第26回2級/第13回1級 共通)受験要項(2026年6月)
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
- 確認日はいずれも2026年10月22日です

