社会人になると、職場の先輩や親戚、ときには知り合いから「保険はもう入った?」と聞かれることがありますよね。入っておいたほうがいい気もするけれど、何にいくら払えばいいのかは分からない。新社会人のお金の悩みのなかでも、保険はとくに判断の材料が足りない分野です。
でも、民間の保険を考える前に知っておきたいことがあります。会社員になった時点で、あなたはもういくつもの公的保険に入っているんです。給与明細で毎月引かれている健康保険料や厚生年金保険料は、病気やけが、障害、万一のときの保障とセットになっています。
この記事では、厚生労働省・協会けんぽ・日本年金機構の公式情報で確認できた範囲だけを使って、公的保険でどこまでカバーされるのかを整理しました(情報確認日: 2026年11月4日)。そのうえで、民間の保険を考えたほうがいい人・急がなくていい人の考え方と、無料の保険相談を使うときに確かめたい質問をまとめています。特定の保険商品をすすめることはしません。一緒に確かめていきましょう。
結論:先に3つだけ
- 会社員は4つの公的保険に入っています。健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険です。病気やけがの医療費、働けない間の収入、障害や死亡への保障の土台がここにあります。
- 医療費には月ごとの上限があります。窓口での負担は原則3割で、さらに高額療養費制度によって、1か月の自己負担には所得に応じた上限があります(2026年8月から金額が見直されています)。
- 民間の保険は「公的保険と貯金で足りない分」を埋めるものです。足りない分がどれくらいかは、扶養している家族の有無や貯金の額で人によって変わります。急いで決めず、自分の数字で確かめてからで間に合います。
会社員になると入っている4つの公的保険
まずは全体像です。入社すると、勤務先を通じて次の4つに加入します(労災保険は会社単位で加入していて、個人の手続きはありません)。
| 公的保険 | 主に備えるもの | 保険料 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 業務外の病気・けがの医療費、働けない間の収入(傷病手当金) | 会社と本人で負担(料率は加入先で異なる) |
| 厚生年金保険 | 老後の年金に加えて、障害が残ったとき(障害厚生年金)や死亡したときの遺族への保障(遺族厚生年金) | 標準報酬月額の18.3%を会社と本人で折半 |
| 雇用保険 | 失業したときの給付や、育児休業中の給付など | 会社と本人で負担 |
| 労災保険 | 仕事中や通勤途中の病気・けが | 事業主が負担(本人の負担はなし) |
年収ごとに税金と保険料がいくら引かれるかは、年収400万円の住民税と保険料を公式の税率で計算した記事や手取り16万円は年収いくらかの検証で計算しています。
病気やけがのお金は、公的保険でどこまで出る?
窓口での負担は原則3割
厚生労働省の資料のとおり、70歳未満の人が医療機関の窓口で払うのは、保険が使える医療費の3割です。残りの7割は健康保険から支払われます。
1か月の自己負担には上限がある(高額療養費制度)
入院や手術で医療費が大きくなっても、1か月(1日から月末まで)の自己負担には上限があります。上限を超えた分は、申請すると高額療養費として払い戻されます。協会けんぽの公式ページでは、2026年8月から2027年7月までの上限が次のように示されています(70歳未満・抜粋)。
| 区分(標準報酬月額) | 1か月の自己負担の上限 | 年間の上限 |
|---|---|---|
| ウ(28万〜50万円) | 85,800円+(総医療費−286,000円)×1% | 53万円 |
| エ(26万円以下) | 61,500円 | 53万円 |
たとえば区分ウの人が、1か月に総医療費100万円(窓口負担3割なら30万円)の治療を受けた場合、公式の計算式に当てはめると上限は85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1%=92,940円です(当編集部の計算例)。新卒1年目の多くの人は、区分ウかエのどちらかに入ります。自分の標準報酬月額は、勤務先から届く通知や給与明細の保険料から確かめられます。
ただし、協会けんぽのページには「保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません」とも書かれています。入院中の食事代の自己負担などは、上限とは別にかかるお金です。また、上限額は2027年8月にも所得区分の細分化などの見直しが予定されています。最新の金額は協会けんぽ(または勤務先の健康保険組合)で確かめてください。
働けない間の収入は「傷病手当金」
業務外の病気やけがで仕事を休み、給与が出ないときは、健康保険から傷病手当金が支給されます。協会けんぽの説明では、次の4つをすべて満たすことが条件です。
- 業務外の病気やけがの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(4日目から支給)
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
支給期間は支給を始めた日から通算して1年6か月です。1日あたりの金額は、直近12か月の標準報酬月額の平均÷30×2/3が目安になります。加入から12か月に満たない人は、自分の平均と、協会けんぽ全体の平均(2025年4月1日以降に支給が始まる場合は32万円)の少ないほうで計算します。たとえば標準報酬月額24万円の人なら、240,000円÷30=8,000円、8,000円×2/3で1日あたり約5,333円です(当編集部の計算例)。給与のおよそ3分の2が、最長1年6か月にわたって支えになると考えるとイメージしやすいと思います。
仕事中・通勤中のけがは労災保険
仕事中や通勤途中の病気・けがは、健康保険ではなく労災保険の対象です。厚生労働省の案内では、療養のための給付や、休業4日目からの休業の給付(給付基礎日額の60%)などが受けられます。保険料は全額を事業主が負担しています。
障害が残ったとき・亡くなったときの公的な保障
厚生年金は老後のためだけのものではありません。日本年金機構の案内では、厚生年金に加入している間に初診日がある病気やけがで、一定の障害の状態(1〜3級)になったとき、保険料の納付の条件を満たしていれば障害厚生年金が支給されます。
また、厚生年金に加入している間に亡くなったときなどは、その人に生計を維持されていた遺族に遺族厚生年金が支給されます。受け取れる遺族は、配偶者・子・父母・孫・祖父母で、順番や年齢の条件があります(たとえば父母は55歳以上で、受け取りは60歳から)。
ここから分かるのは、独身で、だれかの生活を支えていない新社会人なら、亡くなったときに遺族の生活費を大きく残す必要性は、多くの場合それほど高くないということです。逆に、結婚している人、子どもがいる人、親や兄弟の生活を支えている人は、公的な保障だけで足りるかを一度計算しておく意味があります。
民間の保険を考えたほうがいい人・急がなくていい人
ここまでの公的保険をふまえると、民間の保険は「公的保険と手元の貯金では埋めきれない部分」を補うものだと整理できます。どこが足りないかは人によって違うので、次のように分けて考えてみてください。
| 考えてみる価値がある人 | 急がなくていい人 |
|---|---|
| 家族の生活を支えている(配偶者・子ども・親や兄弟を扶養している) | 独身で、だれかの生活を支えていない |
| 貯金がほとんどなく、高額療養費の上限額や入院中の食事代などをすぐに払えない | 高額療養費の上限額の数か月分くらいの貯金がある |
| 親が契約してくれた保険があり、内容をよく知らないまま保険料を払っている | まだ初任給の明細も届いておらず、自分の手取りが分からない(まず手取りを確かめてからで間に合います) |
「若いうちに入ったほうが保険料が安い」という話を聞くこともあると思います。年齢や健康状態で条件が変わるのは事実ですが、それだけを理由に、内容を比べないまま毎月の固定費を増やすのはおすすめしません。保険料は一度決めると毎月払い続けるお金です。まず手取りと毎月の固定費を書き出して、保険料にいくらまでなら回せるかを決めてから考えても遅くありません。
無料の保険相談を使う前に、先に確かめたい7つの質問
自分ひとりで判断しきれないときは、ファイナンシャルプランナー(FP)などに相談する方法もあります。無料で相談できるサービスも多いですが、使う前に次の質問を用意しておくと、話がぶれにくくなります。
- 相談料は本当にかからないか。無料なら、サービスはどこから収入を得ているのか
- 相談の中で保険の提案を受けることはあるか。提案を受けても、加入しなくていいか
- 何社の保険を扱っているか。特定の会社の商品だけになっていないか
- 公的保険(高額療養費・傷病手当金・遺族厚生年金)の分を差し引いたうえで、足りない額を計算してくれるか
- 今入っている保険(親が契約したものを含む)の内容を確認してもらえるか
- 担当者と合わなかったときに、変更を申し出られるか
- 面談の場所・方法(オンライン・対面)と、日程変更やキャンセルの連絡先
相談の前に、給与明細(保険料の欄)と、今入っている保険の証券や契約内容が分かるものを手元に用意しておくと、話が早く進みます。
FPの無料相談を紹介するサービスの一例
公的保険で足りる部分と足りない部分を、自分の給与明細を見ながら第三者と一緒に確かめたい人には、FPを無料で紹介してくれるサービスが合います。とくに、扶養している家族がいる人や、親が契約した保険の中身が分からないまま払っている人が、一度整理する場面で使いやすい仕組みです。一例として、保険マンモスPRの公式サイトに書かれている内容を整理しました(2026年11月4日確認)。
- どんなサービスか:公式サイトのよくある質問では「保険マンモスは保険会社ではありません。FP(ファイナンシャルプランナー)を無料で紹介するサービスなどを行っています」と説明されています
- 相談料:無料。相談の内容が多く、面談が複数回になっても無料のままと書かれています
- なぜ無料か:公式サイトでは、保険マンモスは提携FPから広告料を受け取り、提携FPは保険会社から手数料を受け取っているため、相談者の費用負担はないと説明されています
- 提案と契約:紹介されるFPは、家計の診断やライフプランにもとづいて保険などの提案やアドバイスをすることを目的としていて、「契約等の義務はございません」と書かれています
- 相談の方法:自宅や近くのカフェなど、指定した場所にFPが訪問して面談する形のほか、オンラインでの相談も選べます
- 担当FPの変更:担当FPが合わなかったときに変更を申し出られる「イエローカード制」があります。ただし、住んでいる地域によっては変更が難しい場合があること、担当FPを通じて保険契約が完了している場合は変更できないことも書かれています
- 申込みの流れ:フォームか電話で申し込むと、翌日までにメールか電話で連絡があり(翌日が土日祝日の場合は週明け)、相談内容などをふまえてFPが選ばれます。候補日の連絡まで1週間程度かかる場合があると書かれています
公式サイトには「社会人になった」ときの保険の考え方をまとめたページもあり、新社会人の場合は「保障が足りないというよりは過剰であるケースが多い」と書かれています。相談の場では、上の7つの質問を使って、公的保険の分を差し引いた足りない額から話を始めてもらうと、提案を比べやすくなります。提案を受けても、その場で決める必要はありません。持ち帰って、手取りや家計の数字と照らし合わせてから判断してください。
※ このページのリンクの一部は広告(PR)です。当サイトは相談窓口を紹介するだけで、特定の保険商品の説明・推奨はしていません。
転職するとき・会社を辞めるときの保険の切り替え
転職で次の会社に入るまで日が空くときは、健康保険と年金の手続きが必要です。会社を辞めると、その会社の健康保険は使えなくなります。
- 健康保険:選択肢は、前の会社の健康保険の任意継続、市区町村の国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者になる、の3つです。協会けんぽの任意継続は、退職日までに継続して2か月以上の加入期間があり、退職日の翌日から20日以内に手続きすることが条件で、加入できるのは2年間です。保険料は会社負担分も含めて自分で払うことになります(上限あり)
- 年金:日本年金機構の案内では、退職して国民年金に切り替えるときは、退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区町村の国民年金担当窓口などで手続きします
- 傷病手当金:退職日までに継続して1年以上の加入期間があり、退職日に傷病手当金を受けている(受けられる状態の)人は、退職後も続けて受け取れる場合があります
勤務先が変わると、福利厚生として用意されている保障も変わることがあります。入っている民間の保険があるなら、転職は内容を見直すいいタイミングです。退職を伝える時期や引き継ぎの進め方は円満退職の進め方にまとめています。
まとめ
会社員になった時点で、医療費の上限(高額療養費)、働けない間の収入(傷病手当金)、仕事中のけが(労災保険)、障害や死亡への保障(障害・遺族厚生年金)という公的な土台があります。民間の保険は、その土台と貯金では足りない部分を補うもの。家族を支えているか、貯金がどれくらいあるかで必要な額は変わるので、まずは自分の給与明細と公式の計算式で確かめてみてください。ひとりで判断しにくいときは、無料の相談を「足りない額を一緒に計算する場」として使い、その場では決めない。それだけで、焦って固定費を増やす失敗はかなり防げます。
出典
- 協会けんぽ「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」(公式ページ・2026年11月4日確認)
- 協会けんぽ「傷病手当金」(公式ページ)、「任意継続」(公式ページ)
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合」(資料)、「労災補償」(公式ページ)、確かめよう労働条件「通勤災害のQ&A」(公式ページ)
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件」(公式ページ)、「遺族厚生年金」(公式ページ)、「会社を退職したときの国民年金の手続き」(公式ページ)
- 保険マンモス公式サイト(お申込みの流れ・イエローカード制・対応エリア・社会人になった、2026年11月4日確認)
※ 本記事は公的保険の一般的な仕組みの説明です。加入している健康保険(協会けんぽか健康保険組合か)や個別の状況で扱いが変わることがあります。個別の判断は、勤務先の担当部署や各制度の窓口でご確認ください。

